カンボジア民際協力S3事業報告会(11/22) 開催報告

こうほくでは2017年からカンボジアS3(有機農業の発展を通じた豊かで幸福なコミュニティの構築)プロジェクトに支援金を通じ民際協力しています。今回、S3プロジェクトコーディネーターの米倉雪子氏(元JVCカンボジア事務所長、昭和女子大准教授)に、9月に現地視察された報告をしていただきました。

ー報告内容概要ー
カンボジアでは都市の発展が著しい反面、地方との格差は広がる一方で、中国からの巨額投資や貸付など、生活面では多くの輸入品が溢れ、農産物も多くは輸入品が占める。地方の農村部は生活のために出稼ぎを選ぶことが多い。

このような状況のなか、緑の芽有機農園学校校長ヤング・セイング・コマ氏は、出稼ぎに行かず生活できるように有機農業で農村部にちからを付けてもらい、都市部の有機農業に関心のある住民(富裕層)の共感をえて消費者となってもらうことをめざして活動している。都市の住民たちはスタディツアーで自前でバスをチャーターしてきて収穫を手伝ったり交流したり、週末農作業を楽しむ人たちも増えている。プノンペンには自然農産物店(NAPshop)を開いて、そこを中心にエコ意識ある人たちが育っている。

コマ氏の指導方法は、まずは稲作より早く生育して換金できる野菜からスタートする。未経験でも先輩に教えてもらいながら成功体験を積み重ねる。もちろん有機農業にこだわり肥料や害虫防除も地元で採れる草や籾などを使って市販の薬品は使わない。パッションフルーツ、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、コーヒーなどの果物も半年で成長するのでコマ氏指導の育て方を守って収量をあげる人もでている。有機米は一般の米と違って安定して販売できるため多くの農家で取組んでいる。

作った作物を地元の市場で販売するためのサポートにも力を入れているが、新鮮で長持ちする有機野菜は評判がよい。

成功して収量や収入をあげられる人ばかりではないが、規模が大きくなれば人手も必要になり働く人も必要になるので、地元での就労の機会は増える。出稼ぎや低賃金の工場労働で地元を離れるよりは、まじめに働き資金をためて、やがては土地を借りたり買って農業を続けるという道も開ける。

コマ氏は緑の芽有機農園学校(PBT)を運営し有機農法の指導者も育てている。その圃場では地元の若者が作業に携わり栽培方法を学ぶとともに、収穫野菜は市場で販売され1日5㌦の収入も得ることができる。

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カンボジアの貧困度の高い7つの州でコマ氏はこのような有機農業の活動を展開し、地元で頑張って農業をやろうと考える人たちの未来への希望になっています。SNS発信も力を入れ、コマ氏の活動はカンボジアの農業の未来、国の未来をも見据えた大きな視点からの活動でもあることが見えてきました。
わたしたちの民際協力した支援金は会議費や移動費(ガソリン代)などに有効に使われて日々の活動に役立てられていると聞き、この大きな活動の一助を担っている気持ちで応援していきたいと思います。

ー参加者感想ー
稲作のみの低収入しかなく、出稼ぎに行かざるをえなかった人達が、有機農業の野菜や果物作りで収入が増え、出稼ぎに行かなくて済むようになったとの報告は、大変嬉しく思いました。
思いつきの無責任な援助ではなく、カンボジア人であるヤング・セイング・コマ氏(緑の芽有機農園学校校長)が、農民のことを本当に思って、丁寧な農業指導を重ねてこられたことがよくわかりました。
消費者に継続的に購入してもらうために、いつも作物がお店に並んでいるよう、農家を回って集めて運んだり、都会からの産地見学ツアーを企画したりと工夫されていて、きちんと成果が出ているのは、素晴らしいことです。
今後も、政治的混乱という大きな問題のなか、カンボジアが本当に豊かな国になるよう、私達も支援して行きたいと思いました。


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